日本では、一度決めたことは全うする
価値観が美徳のように語られています。
石の上にも三年ということわざもある。
今回は、責任感を持ってやり遂げるのが
必ずしもメリットのあることではない、
ではどうするかという問題提起です。
警備なら、交通誘導では現場工期が
終わるまで警備したい。現場監督に
信頼されていればそうですよね。
施設警備では、苦労して立ち上げた
現場だから、入札で負けるまで居たい。
気持ちは分かります。警備でなくても
一度発足したプロジェクトから降りる
のは、屈辱ですからね。
最後までやり遂げるといった道徳心?
または忠誠心は、日本人の精神性に
根ざしていると観ます。
今回提言したいにのは、僕の失敗談を
交えて、義理や道徳心は悪くないけれど
損得勘定も加えてみる。
僕が最初に勤めた地場中小警備会社A社。
苦労して僕らが立ち上げた市役所警備隊を、
一部の人間が私物化する流れに。
私物化した輩に、美味しいところを
取られ、僕は副隊長として責任だけを
負う形に。面白くありません。
立ち上げのドタバタ劇の中、何人もの
隊員がドロップアウトしていきました。
その手前、最後まで勤め上げるのが義務の
ように思っていたのです。なんとも感傷的な
義務感だったか。
入札に負け、市役所を撤退する時に
なって、僕は直属上司との関係の悪さ
が問題になると思っていなかった。
市役所警備隊から、無理な応援を強要され
潰れる同僚もいた中、僕は上司の方針に
反発していました。
それで上司の心証を悪くした僕は
敗戦処理で干されることに。損得勘定
からすれば、当然の帰結です。
もっとも、市役所警備隊という大所帯の
全てに対応する、受け皿たる別の施設は
A社にはありませんでした。
美味しい想いをしていたやりたい放題の
輩たちは、さっさと別の施設に異動して
行きました。
僕は市役所でクライアント側からも
評価されていたのに・・・と思うも
後の祭り。自己満足の世界ですね。
人事権を持つ、上司との関係が全てと
言っていいでしょう。僕は責任感を搾取
されただけだったのです。
とはいえ、当時勤めていた警備会社に愛想
が尽きていたのも事実で、辞める大義名分
を探していた。
一方社長は僕を評価していたらしく、
辞めるなと慰留してくれましたが、
上司の敗戦処理失敗を理由に一点突破。
大義名分は、ここ一番の切り札になります。
僕が浅はかだったのは、上司との関係が
悪ければ、敗戦処理もそれ相応になると
予測していなかったこと。
上司との関係が悪ければ、業界内に知り合い
を増やし、転職のチャンスを増やすとか
一旦辞めて、職業訓練に行く戦略を練る
べきだったのです。
とは言え、愛想が尽きていた会社を揉める
ことなく辞めることができたのは、大戦果
でした。別の警備会社からのオファーあり。
たまたま応援で来ており、知り合った別の
隊員がA社を辞め、転職した先の警備会社
でした。
忠誠心に縛られ過ぎると、人生が窮屈に
なってしまう。もはや昭和ではないのです。
人間関係も流れを見て判断する。
この関係を続けていた延長上に何があるのか
これを少し想像する。
例えば、警備検定2級受験の話が来て
キャリアアップに資するなら、辞めない
選択もいいでしょう。
検定合格して、2~3年お礼奉公よろしく
勤めたら、別の会社に転職を考えるなど
戦略的に動きましょう。
義理や道徳心をベースに忠誠を誓うのも
悪くないけれど、これからはもっと
ドライでいいじゃないか。
ここで近年導入が進んでいる
ジョブ型雇用が普及してもいいかと。
ジョブ型雇用とは、従来のメンバーシップ
型雇用とは違い、労働期間を定めると同時に
職務内容や報酬を細かく決めて就労する。
例えば警備なら、施設を落札した契約期間で
労働契約を結ぶ。
労働時間や、他の現場での応援など
仕事の中身を細かく決める。報酬も
然り。
次回入札で負ければ、そこで契約終了。
勝てば、一旦リセットして労働契約の
見直しを行う。
契約の切れ目が縁の切れ目となれば、
もっとドライに考えることができる。
交通誘導警備なら、大きな工事が終わる
までといった契約もありでしょう。
そもそも、警備業それも地場中小警備
会社は、終身雇用はおろか長年従事して
くれるという意識は薄い。
やり遂げるなら一定の枠内で、という
縛りを設けることで、無限の搾取を
防ぐ効果も期待できます。
そもそも会社組織というものは、
倒産しない限り、続いていくもの。
その会社を動かす幹部ならともかく、
一兵卒として従事するなら、忠誠心も
限定でいいかと。
任された仕事(現場)に最後まで面倒
見ないといけないことはないのです。
限界を感じたら途中でも放棄していい。
放棄というと、言葉は悪いですが
要するに、自分がもっと活躍できる
ステージを見つけたら、移っていい。
恩があるから動きににくい、と言う
人もいるかも知れませんが、変な
辞め方をしなければいいのでは。
ところで地元ビルメンテナンス業界で、
そこそこ名の知れた会社で設備管理を
している青年がいました。
当時35歳くらいだったでしょうか。
彼の能力や資格からして、今の仕事に
甘んじているのはもったいない。
高校時代は、全国優勝を複数回している
サッカー部に属していました。
周囲は彼に対して、年齢的にタイム
リミットだから、もっと待遇のいい
会社へ転職を勧めますが
彼はクビを縦に振りません。
理由は今に会社にお世話になって
いるから。
彼の忠誠心は、日本人として嫌い
ではありませんが、それに縛られ
過ぎるのもどうなんだか。
任された仕事(現場)を最後まで
やり遂げる。その延長上に何が
あるのか。
さらに言えば、やり遂げることで
どういったインセンティブがあるのか。
昇給するのか、昇格するのか、
労働契約を見直したり、雇用の
保証を厚くするのか。
インセンティブが見えていないのに
闇雲に頑張るのは、賢明ではありません。
仕事は自分が幸せに
なるためにするのものです。
自己犠牲のやりすぎは、搾取のカモに
される恐れがあります。
この現場やプロジェクトを最後まで
やり遂げたら何があるのか。
これは正規雇用者、言い換えれば
メンバーシップ型雇用者には、
あまりない悩みです。
警備のように、日給月給制だったり
入札で現場を失えば、事実上失業して
しまうなど
広い意味での非正規雇用者に
横たわる悩みでありましょう。
警備なら大手以外の地場中小警備
会社にほぼ当てはまります。警備を
含むビルメンテナンス業界も。
雇う側が非正規扱いで来るなら、
忠誠心もほどほどにして、次の
飯のタネを探しましょう。
やり遂げるのはいい事なのか

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