社交辞令であっても

組織を去っていく人。去り際にその人の
本性が出ると言われます。確かにその通り
でしょうが

今回は逆に、去っていく人に対して
どんな扱いをするかで、その組織の
器が知れると言う話です。

自分が最初に勤めた、地場警備会社A社。
従業員50人規模の、中小オーナー企業。

自分がA社をを辞める時、警察OBの
女性専務(後の社長)はこう言ってくれた。
「縁があったら、またA社で働いて下さいね」

自分がA社を辞めることになったのは
直属の上司の失敗。何の失敗かと言えば、
敗戦処理。

警備していた地元市役所が入札に負け、撤退。
あぶれた隊員を全てカバーできる受け皿は
A社にはありませんでした。

当然上司は、自分の気に入った部下から
別の施設に配属していきました。

自分はどうかといえば、上司の苛烈な
他現場への応援要請に対して、
反発していました。


実際それで潰れ去っていった
同僚もいたのです。

一方上司に忖度して、要領よく立ち回って
いた部下たちが、気に入れられていました。

自分は宙ぶらりんとなり、明日の
仕事さえおぼつかない状態に。

そんな時、かつての同僚から転職の打診が
あったのです。外資系保険会社ビルを
警備する会社でした。

話は進み、上記の会社に内々に
決まったのでA社を退職することに。

その話を聞いたオーナー社長は驚き、
慰留したのですが

直属の上司の敗戦処理失敗により、
明日をも知れぬ立場になってしまった、と
辞めざるを得ない状況に追い込まれたと説明。

すなわち上司のミスに乗じて、一点突破を
図ったのです。但し上記の会社に転職する
ことは伏せました。

そんなわけで、自分はA社を去ることに
なりましたが、ありがたいことに社長はじめ
幹部からは評価されていたようです。

専務は、縁があったらまた働いて下さいねと
社交辞令のつもりで言ったのでしょうが

そこには業務に貢献した評価も含まれていた、
去っていく従業員への労いもあったのです。

去っていく人間を笑顔で送り出す余裕のある
組織は、強い。そんな組織は出戻りの人もいます。


出戻りは警備業界珍しいことでは
ありませんが、A社は、今でも地元中堅所の
警備会社として、ステータスを保持してます。

そして次に転職した会社(B社とします)は
対照的でした。

A社に比べ、福利厚生をはじめ会社然と
していたものの、組織としては変だった。

評価の悪くなかった前隊長を、上司である
所長が、次期隊長と結託して排除工作を実施。

前隊長の粗さがしを行い針小棒大に
クライアントである外資系保険会社に報告。

結局、クライアントからの命令で前隊長は
解雇された形になり、所長の思惑通り腹心の
部下であった隊員を平隊員から新隊長へ抜擢。

この人事に、疑問を持たなかった現場隊員は
いませんでした。しかしそこは所長の恫喝が
効いていた。

突然の前隊長の解雇、新隊長の就任に驚いた
B社の部課長が、東京から地元に訪れてきました。

そこで舞台裏の事情を話したらどうなるか、
と口封じを行っていたのです。

この背景もあり、所長と結託した隊長は
パワハラで部下たちを支配するように。

ミスをした部下隊員たちには、始末書・
累積すればクビを連呼。

これだけ聞けば社会通念上問題なさそうに
聞こえますが、始末書の取り方が尋常では
なかった。

隊長は、始末書は人事権のある支店までは
行っている、累積すればクビになると説明。

但しその内容がお粗末なもので、
隊長の指導範囲であるもの。

本当に支店まで行っていれば、指導教育
責任者である隊長も指導責任を問われ、
一緒にクビになってもおかしくない。

そうならないということは、始末書は
所長のところで止まっていた可能性大で
あった。

そんな姑息な支配をやっていた手前、
隊員の人間関係も荒んだものに。

お互いに粗さがしに血道を上げ、
密告の応酬。不毛な潰しあいです。
休憩時間の話題が、次は誰を辞めさせるか。

自分は当時、隊長と平隊員の間にある管理職、
班長(副隊長相当)をやっていました。

文句だけ百人前で、仕事をしない平隊員と
パワハラ隊長の狭間で、追い詰められた
自分はついには退職を選択。

別の隊員が辞める時は、隊長主導で送別会を
企画していましたが、自分の時は何もなし。

隊長を後ろから蹴っ飛ばすようにして
辞めた背景があったかもしれませんが、隊長は
自分が一番仕事をしたと評していました。

見かねた同僚が、有志で送別会を
企画してくれたのです。

その後、B社警備隊はどうなったか。
因縁をつけクビを切った元部下であろう
インターネット掲示板への書き込み。

これまでの職場の黒歴史を暴露する
ものでした。


書き込みに気づいたクライアント側の
責任者が、隊長に本当かと質問。万事休す。

B社警備隊はクライアント側の信用を
失い、臨時入札で負け全員解雇。

書き込んだ元部下は留飲が
下がったことでしょう。

パワハラとは言え、上司である隊長を
後ろから蹴っ飛ばすようにして辞めた
自分も大概ですが

職場自体もそうされるだけの
器だったということなのです。

去っていく人に冷たい組織ほど、ろくな
もんじゃない。お荷物ではなく、
貢献していた従業員なら尚更です。

自分は社交辞令と表現しましたが、
そうであっても、使う側の本音が
横たわっている。

可能性は限りなくゼロに近くても、
出戻ることを考慮した発言は、
組織の器を感じさせます。

後にB社に転職したことがA社社長に
バレて電話がかかってきました。
要は戻ってこいというオファー。

お気持ちだけありがたく頂戴しますと、
丁重にお断りしました。直属の上司の
失敗がA社退職の理由ですから。

去っていく人に対して、使う側の掛ける
言葉はこれまでどんな扱いをしてきたか、
集大成のような意味があります。

それと同時に、その組織が
今後どうなっていくか予測できる
ものでもあります。

社交辞令であっても、リップサービスで
あっても、さらに建前であっても。
首の皮一枚残すような配慮が含まれているか。

それと反対なのが、お前はどこに行っても
勤まらないという文言でしょう。

労働者=消費者なのです。いつ何時辞めた
従業員が顧客側にならないとも限らない。

さらにSNSの普及で、辞め際の心無い
文言は、ネット上に拡散される可能性も。
そうなると損害はプライスレス。

相手の気持ちに配慮した文言を持って
送り出せるか。これまた、組織としての
器が問われるのです。

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